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日本で「起業家」が生まれにくい理由
不思議に思ったことはありませんか?
サービスの質や働く人の勤勉さは圧倒的に日本が上なのに、シリコンバレーを中心としたアメリカでは、次から次へと優れた起業家や、世界を変えるような革新的なサービスが生まれている一方で、なぜ、日本からは世界を変えるような起業家やビジネスはほとんど生まれていません。
もちろん、歴史、政治、エコシステムなど構造的な違いもあるのですが、文化や考え方において「決定的な要素」があるとも感じています。
シリコンバレーで6回の起業を成功させた日本人がいる
アメリカ人が全て起業家にはなれないように、日本人だから起業家には向いていないということはないと思います。
ただ、アメリカでは日本より明らかに起業がしやすいエコシステムがあるので、勤勉な日本人ならアメリカでも成功できる可能性は多分にあるはずで、それを実際に実現している伝説の日本人として有名なのが「熊谷芳太郎さん」です。
エコシステムが整ったアメリカであっても、スタートアップの9割以上は失敗すると言われていますが、「熊谷芳太郎さん」は、新卒で就職した会社を半年で辞め、単身アメリカに渡って複数のビジネスを連続起業し、その全てを売却や株式公開しています。
その伝説の日本人である「熊谷芳太郎さん」も文化や考え方において「決定的な要素」について以下のように語っていました。
アメリカは、たとえ失敗しても悪いレッテルを貼られることが絶対ないのも違うところ。
スタートアップをしても結局、ほとんどの人が失敗する。
しかし、失敗した人がいっぱい集まると、物事に対して素早く動ける。
失敗した経験は成功するために非常に生きてくる。
日本の場合はあまり失敗経験のある人がいないから、スタートアップを成功させるのは非常に難しい。
熊谷芳太郎さんのインタビュー記事より
失敗は成功の母
私自身も日本とアメリカのどちらも仕事やプライベートで行き来していますが、日本とアメリカの文化の違いで最も大きいと感じるのが「失敗」に対する考え方です。
ベンチャーキャピタルが起業家にお金を投資するかを判断する際に「過去に失敗経験があるかどうか?」という点を高く評価するというエピソードがあるほど、アメリカはには【(適切な挑戦の結果による)失敗を賞賛する】文化があります。
日本でも「失敗の経験は成功の糧になる」ことは、昔から様々な偉人が繰り返し名言に残していますが、実際「失敗」を避けることにものすごくエネルギーを使ってしまいたくなる文化があることは否めないと思います。
失敗に寛大なシリコンバレーからは優秀な起業家が次々出てくるので、失敗した人がたくさん集まることでより素早く動けるようになって、さらに成功が加速していく、という好循環が生まれている一方で、日本は文化や教育制度がで「失敗を許さない」雰囲気ができてしまっているので、「良いところよりも苦手な方を改善したりしてできるだけ失敗しないようにするべきだ。」という親や先生から刷り込みも強いと感じます。
日本企業の人事評価も減点方式であることが多く、たとえ大きな成果を出していても一度失敗しただけで「出世コース」から外れてしまう、といういうなことも多いので、できるだけ無難に、チャレンジするよりも失敗しないようにしよう、と考えたくなってしまうのは仕方のないことだと思いますが、もしそのような人生を送りたくないのだとしたら、できるだけ早い段階で対策をしておく必要があります。
トップ起業家のほとんどは倒産を経験している
20世紀のトップ起業家20人のうち、19社は過去に「倒産」を経験したことがわかっています。
より具体的に明かすと、倒産していなかったのはマイクロソフトの「ビル・ゲイツ」だけで、「フォード」を作ったヘンリー・フォード、「ウォルマート」の創業者サム・ウォルトン、アップルのスティーブ・ジョブズでさえも、過去に非常に大きな失敗をしていて、そこから立ち直って伝説の起業家と言われるようになっています。
2025年に米国大統領に返り咲き、米国の経済成長を更に加速させようとしているドナルド・トランプが、4回の破産を経験するも毎回復活して膨大な資産を築いています。
いまや世界で18,000店舗以上を構える「ケンタッキーフライドチキン」創業者のカーネル・サンダースの武勇伝も有名ですよね。
カーネル・サンダースは、若い頃から転職を繰り返し、40歳にしてようやく店舗を立ち上げましたが、その後も火災にあったり、倒産を経験するなどの不運を乗り越え、65歳でようやく成功を掴んでいます。
夢の国である世界一のテーマパーク:ディズニーランドを作ったウォルト・ディズニーも「お前には才能がない」と新聞社をクビにされ、起業家になっての3回の倒産を経験したのちにやっと成功しました。
配車サービスでタクシー業界の常識を変え、ウーバーイーツというサービスでも世界を席巻している「ウーバー」のCEO:トラビス・カラニックも、様々な失敗や苦難を乗り越えて成功者になっています。
トラビス・カラニックの最初の起業は学生の時に友人と立ち上げたインターネット関連の会社でしたが、違法ダウンロードが可能なソフトだったということが原因でエンターテイメント業界の33社から計2500億ドル(約26兆円)の賠償請求をされ、こ会社を破産させてピンチをしのぎました。
2社目の会社では、共同で立ち上げたパートナーが財務担当なのに税金を納めておらず会社の資金繰りは最悪の状態になり、残っていた最後のエンジニアまで引き抜かれる裏切りによって廃業を余儀なくされます。
その後、3社目に立ち上げたのが「ウーバー」ですが、学生時代に起業してからの10年間で彼が受け取った個人報酬はゼロだったそうです。
失敗は財産になる
シリコンバレーには失敗を経験した人がたくさんいて、失敗を財産だと考えて高く評価しています。
失敗の経験があるから、失敗をポジティブに捉える文化があるから、常識にとらわれず新しいイノベーションを起こすビジネスの原動力になっていることは間違いないと感じます。
起業に限らず、失敗を経験値という財産として捉えられると成長や可能性が加速するので、失敗を「成功の糧(母)」に昇華することに繋がるのだと思います。
他と違う成功を望むなら非凡な思考が必要
もちろん、「倒産ような大失敗を経験しないと起業で成功できない」ことはありませんが、起業家として成功する、つまり、他の人とは違う大きな成功を掴みたいなら、失敗に対しての「打たれ強さ」が不可欠だと思います。
起業家は「すでに出来上がっている道を歩んでいく存在ではなく、自ら新しい道を作っていく存在」なので、おそらく見つかない「正解」を探すよりも、小さく色々な方法を試してなるべく早く、多く、失敗から学んでいかなければならないので、失敗への免疫や周囲の理解がないと続けられません。
自分自身が失敗を許容しない人生を歩むのは自由だし尊重されるべきことだと思いますが、何か挑戦しようとしている人の足を引っ張るような同調圧力や否定の言葉は絶対に使わないようにはしたいですよね。